慎重に吟味しても、専任で頼みたい会社・営業が見つからない場合もあるでしょう。すると、選択肢は一般媒介で複数の会社に頼らざるを得ません。
不動産会社と売主とを縛るルールが、一般媒介と専任媒介では異なります。一般の場合、相互の縛りが少なく、自由度が格段に高いといえます。
不動産会社の都合に売主が振り回されることなく、売主が主体的にマンション売却をするシステムが一般媒介契約。
あらかじめ一般媒介のメリット・デメリットを知り、より主体的にマンション売却で利用しましょう。
- 複数の不動産会社から売り出せる
- (不動産会社は)レインズへの登録義務がない
- (不動産会社は)売主へ販売状況の報告義務がない
- 業者間の競争原理を煽る効果を期待できる
- 囲い込みの心配が不要
一般媒介のメリット
一般媒介の大きなメリットは、複数の不動産会社でマンションを売ってもらう点にあります。
売り出したあなたのマンションは、決して申込みが殺到する人気物件になる必要はありません。たった一組「あなたのマンションを買いたい」と言ってくれるお客様(買主)を見つければいいのです。
しかし現実として、この「たった一組の買主」を探し当てるのは非常に困難で、不動産会社の労力と時間がかかります。一般媒介で複数の不動産会社に販売を依頼すれば、業者間で競争原理が働きます。
また、購入希望者の窓口(不動産会社)を複数つくることで、広く集客することが可能です。媒介契約は無料で締結できます。5社と契約しても10社と契約しても無料です。お金をかけずに販売チャンネルを増やし、売却の機会が増えるのが一般媒介のメリットです。
- 専任の1社が、10の販売努力をする
- 一般の5社が、それぞれ7の販売努力をする
1の専任に比べ、2の一般では、3.5倍の販売効果を期待することができます。
早く売れる可能性がある
一般媒介で複数の不動産会社からマンションを売り出した場合、物件紹介の機会が増えるため、早く売れる可能性が高まります。
「早く売れる」というのは、「高く売れる」と同義です。
なぜなら、売り出した物件がなかなか売れなければ、値下げせざるを得ないからです。時間の経過とともにマンションの販売価格が下がるのであれば、早く売れるほど、結果的に高く売れたことになります。
- いい物件だから早く契約しよう
- 他社に負けないように紹介しよう
このような不動産会社間の競争原理は、売主として大いに利用すべきだと考えます。
囲い込みを防止できる
一般媒介のメリットで見逃せないことに、専任媒介による「囲い込み」を防ぐことができます。
一社独占による専任媒介の場合には、他の業者に物件を紹介しないことがあります。
理由は、囲い込みすることで、不動産会社は、より儲けることができるから。
専任媒介の場合には、自社で両手取り引きができるよう、他社から紹介される買主を、理由をつけて(嘘をついて)断ることがあります。
一般媒介では、売り出した物件を独占することができないため「囲い込み」を完全に防ぐことができます。
一般媒介のデメリット
一般媒介のデメリットは、ネットの情報でいくらでも仕入れることができるでしょう。
これは情報の発信サイドにとって、一般媒介は都合が悪いからだといえます。
一般媒介のネガティブキャンペーンを行っているのは、全国の不動産会社と、その不動産会社を広告主として飯の種にしているメディアです。マンションを売却した経験のある、ごく普通の主婦が「一般媒介はサイコー」とブログに綴るのとは、明らかに発信の熱量が違ってくるのです。
では、一般媒介にデメリットはないのかと言えば、やはりそうではありません。
冒頭で「売主が主体的にマンション売却をできるのが一般媒介のメリット」と言いました。裏を返せば、不動産会社の言いなりで、決められない・選べない、売主にとって一般媒介は面倒でしょう。
- レインズに登録されない可能性
- 不動産会社からの状況報告がない可能性
- 広告・チラシは専任物件を優先させる可能性
不動産会社の責任感の欠如
これは、一般媒介でよく言われているデメリットです。
そもそも中古マンションは、不動産会社が責任感を持たないと売れないものなのでしょうか?
決してそんなことはありません。
売れる物件は、責任感の有無にかかわらず売れます。逆に売れない物件は「責任感というフワフワして実態のないもの」をいくら注いでも売れません。
私はこれまで「営業の方に責任感があったので、このマンションに決めました」というお客様(買主)に会ったことがありません。
レインズに登録されない可能性
一般媒介の場合、レインズの登録義務が不動産会社にありません。媒介を結んだ業者を放っておくと、レインズに登録されない可能性もあります。
一般媒介では、売主が主体的に行動する必要があります。
一般媒介を締結するタイミングで営業に「レインズに登録してください」と言って下さい。たった、これだけのことでレインズに登録される可能性が高くなります。さらに、媒介書の特約欄に「レインズに登録すること」と記入してもらえば完璧です。
一部の不動産営業は「会社の規定で一般媒介は登録できない」と言うかもしれません。その会社の決まりであれば仕方ありません。他の不動産会社に期待しましょう。
不動産会社からの状況報告がない可能性
一般媒介の場合、不動産会社は売主へ「販売状況の報告」をする義務がありません。
- チラシはどのくらい撒いているのか?
- ネットの掲載状況は?
- 内覧したいお客様は、いたのか?
売主としては、気になることもあるでしょう。
気になるときには、担当営業に電話をして状況を尋ねましょう。
一般媒介では、売主が主体的に行動する必要があります。(二回目)
広告・チラシは専任物件を優先させる可能性
不動産会社の仲介手数料は成功報酬。マンション売却を成功させなければ一円も受け取ることが出来ません。
一方、ネットの掲載やチラシの配布には広告料が発生します。不動産会社にとっては「確実に稼げるところ(専任物件)」に経費を集中させるのは当然です。
たしかに広告に関して、不動産会社は、一般物件より専任物件の掲載を優先させます。
ここは、媒介を締結する不動産会社数を増やし、広告量を確保します。
一般媒介では、売主が主体的に行動する必要があるのです。(三回目)
- 専任の1社が、10の宣伝・広告をする
- 一般の5社が、それぞれ7の宣伝・広告をする
1の専任に比べ、2の一般では、3.5倍の広告量を期待できます。
マンション売却 | 売却価格 | 売却期間 | 対応と手続き |
得意な業者 | 高く売れる | 短い | スムーズ |
不得意な業者 | 安くしか売れない | 長い | トラブル |
まとめ
- どの会社に媒介を依頼するのか?
- 最初はいくらで売り出すか?
- 値下げ交渉には、いくらまで対応できるか?
- 三ヶ月売れなかったら、100万円値下げするか?
専任媒介に比べ一般媒介では、縛りがなく、自由度が高い分だけ、売主が主体的に行動する必要があります。
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
売り出す不動産屋 | 1社のみ | 1社のみ | 何社でも |
売主が買主を見つける | できない | できる | できる |
売却状況の報告 | 必ず状況を報告 1週間に1回以上 | 必ず状況を報告 2週間に1回以上 | 報告義務なし (売主が訊けばOK) |
レインズへ登録 | 必ず登録 (5日以内) | 必ず登録 (7日以内) | 登録義務なし (頼めば登録) |
宣伝広告費 | 多い | 多い | 一社あたりは少ない |
囲い込みの心配 | あり | あり | なし |
不動産営業の立場からは、やはり一般媒介より専任媒介のほうが、やりやすいのは事実です。
ただ、それだけです。ですから「一般だから紹介しない」といった区別はありません。
むしろ、売れそうな物件だった場合、
専任物件を放ったらかしにしても、一般物件を集中的に紹介します。
専任物件は放置しても必ず自分で売ることになりますが、一般物件でボヤボヤしていたら他の営業に売られてしまいます。
一般物件で売り出すときに必ず守って欲しいルールがあります。
それは、売れたとき・値下げするとき・売るのを辞めたときには、媒介を締結した全ての業者に、必ず連絡して下さい。